会計ソフト開発が楽しい4つの理由

弥生会計のエンジニアをしています、竹山と申します。
この記事は 弥生 Advent Calendar 2020 の7日目の記事です。

私は弥生に中途入社してから、弥生会計の開発に携わり2年が過ぎました。
現在は、入社して3回目の確定申告期間に向けて、弥生会計の「所得税確定申告モジュール」の開発に取り組んでいます。私はこれまで(前職含めて)会計ソフトの開発に携わった期間が長かったので、今年のアドベントカレンダーでは、会計ソフトの開発について書いてみたいと思います。

会計ソフトを作る楽しさを伝えたい

会計ソフトの開発はとても楽しいです!
しかし、「会計ソフトの開発」と聞いて、堅いイメージを持たれる方も多いようです。 何年か前に母校の大学の研究室を訪問した時、大学の先生から「会計というものにイメージがわかず、選択肢に入りにくい」というお話を伺いました。
それは確かに納得できることで、私は高校の頃に簿記と出会い学ぶ機会がありましたが、大学で理系の学部に入ると、他学部の科目を履修しない限り簿記に関わる機会は全くありませんでした。エンジニアになる人の多くはなかなか会計を知る機会がないと思われます。

しかし、会計ソフトの開発はエンジニアにとって格好のテーマになり得ると思うのです。

会計ソフトとは?

何となくお金を計算するイメージがある「会計」は、Wikipediaで調べると以下のように出てきます。(会計 - Wikipedia)

「多くの場合、会計という語は企業などの組織における会計を指し、金銭や物品の出納を、貨幣を単位として記録、計算、管理等することを意味する。これは情報の利用者が事情に精通した上で判断や意思決定を行うことができるように、経済的な情報を識別し、測定し、伝達するプロセスであり、「経理」とも称される。」

難しい表現ではありますが、日々の事業活動を記録して、集計して、決算書にまとめることで、事業活動をされる方やその利害関係者が意思決定をできるようにすることです。 具体的には、取引を帳簿に記録して、集計して、決算書を作成します。決算書は、税務申告のときや、銀行にお金を借りるとき、株主総会のとき、自分が経営判断をするときなど、色々な目的で使います。

そして、これら会計の一連の流れを行うソフトが、会計ソフトです。

楽しい理由① 会計ソフトは役に立つ

会計ソフトは、会計で必要となる様々な作業を効率化します。 会計ソフトの開発を行うことで、企業や個人事業主の力になることができます。

簿記の手続きをかんたんにします

簿記に少し触れると、その作業の手間に驚きます。
仕訳を起こし、総勘定元帳に転記し、試算表に集計して合計残高を確認し、精算表を作って決算整理を行い、決算書を作成します。それは、紙の上でデータを変換する作業の連続です。

しかし、会計ソフトなら取引を入力すればあとの集計や帳票の作成は自動で行ってくれますから簡単です。税務帳票は定められた様式で出力するので、そのまま税務署への提出に利用することができます。

手作業の場合 会計ソフト(弥生会計)の場合
仕訳を起こす レシートなどから自動仕訳(スマート取引取込)、または入力
総勘定元帳に転記する 自動で作れる
試算表に集計する 自動で作れる
精算表で決算整理 決算整理仕訳を入力する
(精算表はない)
決算書を作成 様式通りの決算書を自動作成

消費税の計算をかんたんにします

消費税には様々な計算方式があり、それも取引の種類ごとに処理が異なるので、手作業では大変です。 会計ソフトに入力する取引データには「税区分」という項目があり、これに従って消費税が正確に計算されます。

税務申告をかんたんにします

税務申告には電子申告(e-Tax)が使用できます。会計ソフトのデータを、会計ソフトの画面からe-Taxに送信することもできます。(確定申告e-Taxモジュール

経営判断の材料になります

入力したデータを分析したり、グラフで表示したりすることができ、経営者が経営判断をするための役に立ちます。

楽しい理由② 複式簿記の仕組みが美しい

今日の一般的な簿記の方法である複式簿記では、取引をお金の増減とその要因など、2つの要素(借方と貸方)に分けて仕訳(記帳)します。こうすることで、お金の出入りと同時に、どんな収益や費用が発生したかも把握できます。また2つの要素(借方と貸方)の金額をそれぞれ集計してエラーチェックができます。
そして、お金の増減と収益-費用の2つの側面から利益を計算することができ、これらは最終的にピタリと合います。

複式簿記の仕組みは、大昔(諸説ありますが、15世紀ごろにイタリアで広まったと言われています)に作られたにもかかわらず、プログラムで表現しやすい仕組みになっています。 まるで、勘定科目でリンクされているデータベースのようです。

このような古くからの仕組みを現代のコンピューターシステムで実装していることがすごいと思います。

楽しい理由③ 法令改正対応で社会とのつながりを感じる

複式簿記の仕組みという面では古くから確立されていますが、法令という面では、時代とともに変化しています。

個人事業を営まれる方のための会計ソフトにとって一番大事なイベントが、確定申告です。
毎年のように法令が改正され様式が変更されるので、それに合わせた開発を毎年行います。様々な新機能の開発もありますが、第一に守らなければならないのは、法令改正に迅速・正確に対応することです。法令改正に目を光らせ、改正内容を理解して、いかに効率的に製品の機能に落とし込むかを意識しています。

税法の独特の表現に戸惑うこともありますが、読み解いていくと、緻密に論理立てられていることに気付きます。最近では年ごとの改正内容が複雑な場合もありますが、毎年新たな課題と向き合えることや、制度の変化を間近に感じられることが会計ソフトのエンジニアならではの体験だと思います。

楽しい理由④ より便利な未来を作れる

法令に対応するだけではありません。お客様の使い勝手がよくなるよう常に工夫しますし、より大きな進化として、業界を通して次世代のシステムを検討・提言する活動も始まっています。

未来の社会システムはどうなっているでしょう?
また、その中で会計ソフトはどのような姿になっているでしょう?
長い会計の歴史、コンピュータの歴史を見てみると、会計や社会システムと技術が呼応するように現在のシステムに成長してきたと思います。今後も、デジタル化への取り組みや新しい技術によってさらに便利な社会へ進化していていく予感がして、ワクワクします。会計ソフトの開発を行うことは、広い意味では会計の歴史の中の一コマを刻もうとしているようにも感じます。

まとめ

壮大な夢を描きながら、法令対応の責任を担いながら、会計ソフトの開発は日々進められています。
個別の技術については記載しませんでしたが、今後の変化に対し、様々な技術が選択肢に上がってきます。 会計ソフトの開発は、エンジニアとしてとても魅力的なテーマだと思います。世の中のエンジニアの方や、これからエンジニアを目指す方にも、会計ソフトの開発を選択肢に入れていただければ嬉しく思います。

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